Winding Road

手探りで進む曲がりくねった道。その先でしか本当のものとは出会えない……

終わってみて その2

女子の感想を記録。順位は私的ジャッジ結果。

 

1位 ザギ子ちゃん

SPもFPも圧倒的な存在感と、技の切れ、スピードがあった。15歳だというのに、なんなんだろう、この落ち着き方。達観しているというか、なるようになれ!といういい意味でも開き直り。うまくやろう、まとめよう、というのではなく、自分の体に染み込んだものに未来を委ねよう、体が望む方向に動かそうという一種の覚悟。これが強さってやつなのかなと思った。

所詮すべてを完璧にコントロールすることなんて無理。ならば、生死がどのタイミングで訪れるのかわからないのと同じように、誰にも確かなことはわからないことをぐずぐず考えることはやめ、自分自身にすべてを委ねよう、そんな意思を15歳の少女から感じた。

後半にジャンプを固めるなんて、ルール違反!などという、トンチンカンな文句をつける人がいるようだが、できない人の嫉妬心丸出しで醜悪なだけだから、やめれ、やめれ。もともと前半にジャンプを固めて飛んでしまうから、それをバラけさせるために作ったルールが、後半のジャンプ1.1倍のルールだった。前半固めた飛んだ時代から、ルールが奨励した、後半に固めて飛ぶ時代へ変わった、それだけだ。

まあ、ジャンプだけでなく、バレエの基本を叩き込まれた所作の美しさは、他国の選手からも大きく抜きん出ていたね。手足の長さもさることながら、その手足を美しく使いこなすことができるのは、やはり才能だと思う。作っていないのがすごい、演技が終わっても、バレエの美しい所作が自然と出ている。グリーンルームでソファに腰を下ろしている姿でさえ、美しかった。染み込んだものなのだろう。

他の選手と違って、この世のものとは思えない、そんな畏怖を感じさせる女の子だと思う。存在そのものが畏怖の空気を湛えている。すぐに消えて無くなってしまいそうにも見える。人魚姫みたいな感じ。不思議な存在感のある子。スケートの神様は満足しただろうか?

 

2位 メド子さん

SPもFPもスピード感に欠けたかな。。。技術でカバーしようと、慎重だったようにも思う。いつものような勢いがなかった。ジャンプの入りもコントロールしようという意識が強く見受けられて、思わず肩に力が入ってしまった。骨折から復帰して、怪我は完治していたのだろうけれど、意識はまだ治癒途中だったのかもしれない。あと1ヶ月あれば、結果は変わっていたようにも思える。手負いの状態で戦い抜くには状況が厳しすぎた。

でも、金メダルより、銀メダルを取った人の方が、人々の記憶に永遠に残るような気がする。

真央しかり、クワンしかり、スルツカヤしかり。

繰り返し繰り返し演技を振り返られるのは、銀メダリストが多いように思える。

オリンピックの時計とメド子の時計はちょっと合わなかっただけ。人生はこれからも長く続いていく。自分の人生のピークはこれから、いつ訪れるのかを楽しみにしながら、今の自分のやったことを褒めてやってほしい。そして、ゆっくり怪我を癒してほしいと思う。

 

3位 オズモンド

いやあ、初めてSPとFPをきっちり揃えてきました。揃えたら、無敵、と思っていたので、その通りになり、びっくりでした。もともと華のある選手。大柄なんだけど、繊細な空気を身にまとって、嫌味がなく、明るい。いかにも北米的なその雰囲気が、周囲に、ロシアや日本の選手にはない「開放的な癒し」を与え、ジャッジにも好印象を与えていたように思う。

ジャンプは圧巻の高さと幅。確実に空中で3回転する様は宮原さんにはない華を感じさせた。一回一回ジャンプごとにでっかい華が咲いていく様子はオリンピックにぴったりだった。最初の連続ジャンプが豪快に決まったところで、勝負あった、だった。黒鳥の翼が見えた!と話された解説者がいたが、まさしくその通りだった。演技が終了したとき、150以上、出ると思ったが、その通り152以上のPBスコアでした。

オズモンドの勢いのあるジャンプをしたことで、直後の滑走だったメド子のジャンプがちょっとだけ勢いがないという印象を与えることになったかもしれない。滑走順は時の運なので、どうしようもないが、メド子がオズモンドの前に滑っていたら、、宮原さんの次に滑走していたら、もしかしたら、ジャンプの印象が変わり、順位も変わっていたかもしれない。

 

めずらしいことに、女子は概ねジャッジと同じ評価だった。

ただ、ロシアの2人にはジャッジたちもさすがにナーバスになったようで、点の出方が渋かったように思う。

それまでの大盤振る舞いと比べると、二人とも160以上の争いでよかったように思う。

やっていることの難しさはやはり正当に評価すべき。

 

 

最後に日本選手。坂本さんはオズモンド以上、少なくとも現時点では同等のジャンプができている。所作を磨き上げていけば、PCSをあと5点はあげられる。もちろんスピン、ステップも。オズモンド選手のように150以上のスコアを叩きだすポテンシャルはあるので、このまま怪我をせずに、まっすぐにのびのびと成長していってほしいと思う。

宮原さんの演技はいつもよくできた「作品」なのだが、ノーミスと自己ベスト更新のために演技しているように見えて、鬼気迫るものがない。心の揺れというか、ノイズのようなものがまったく感じられないのだ。きれいなツルンとした演技は見た目きれいだけど、見た人の中に残るものがない。

「よい演技でした」

という一言でまとめられるような演技ではオリンピックでメダルは取れないと思う。あくまでメダルは結果で、目指すもんではないと思うからだ。心の中になぜかざわつくものが残る、そういう演技をしないと、欧米との差が広がるばかりだと思った。

「ノーミス」「自己ベスト更新」

ここから抜け出すには時間が必要だろうな。きっと。

北京に間に合うか? 微妙だろう。